うちのつるちゃんです。
イヌとの暮らしに、リーダシップなど全く必要ありません。
必要なのはイヌの気持ちを理解しようとする心です。
イヌにバカにされないようにとか、ボスは誰か、または犬勢症候群など、よく目にする多くの考え方こそが、イヌを追い詰め、結果としてイヌと暮らす私たち自身の生活を居心地の悪いものにしていく原因となっています。
誤解を解いて、やさしい穏やかなドッグライフを手に入れませんか?
ヒトがいちいち「マテ」や「じっとして」「スワレ」など、イヌに対して号令を出さなくても、その状況に適した行動を、イヌが自分で考えて自分で選択し行動することが出来る能力を発揮できます。
ヒトもイヌも、快適で楽ちんな生活が実現します。
「噛みつく」「引っ張る」「吠える」など、その時に困っている複数の事柄に対する、複数の対処に追われることがレッスンではありません。
これらの事柄は、イヌが気持ちの良い生活環境で適切な経験を積むことのできる毎日を過ごしていると、人もイヌも困らない状況に改善していきます。
人の社会に一方的に合わせるように、人に都合のいい行動(オスワリマテ、ツケなど)を教えることを目的とする従来の「トレーニング」とは根本的に違います。
※もちろん、イヌの希望を叶えるためにヒトが我慢に我慢を重ねることを推奨するものではありません。
実は、私もそうでした…
つるがまだ小さかったころ、イヌと暮らすからには「しつけ」だと思い立ったわたくしは、あるインストラクター養成講座に参加しました。
そこで一人のインストラクターに出会い、その方が開催するしつけ教室に通い始めました。
そのころ、つるちゃんに何か問題があって、しつけをしなくちゃいけないと思ったわけではありません。
ただ何となく、動物病院の人間がオスワリやツケくらいはイヌにさせる事ができた方がいいのではないか、くらいでした。
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イヌが自分の号令をきいてパッとスワッたりフセたりすると、誰もが味わうあの優越感。
自分が優越感を味わえば、その結果「従う」存在として扱われざるを得ないのが自分の大切なつるちゃんなのに、気づきもしませんでした。
当時つるちゃんは他のイヌを見て興奮して吠えたり、飛び掛かっていこうとすることが頻繁にあり、それを直すことが出来ると思っていました。
しつけ教室には2年ほど通ったでしょうか。
確かにトレーニング中には離れた位置からでも「マッテ」と言えば、長い時間そこで「マツ」ことが出来るようになりました。
「ツイテ」と言えば、ゆっくり歩いたり急に早足に切り替えたりする私の左足の脇にぴったりとくっついて歩けるようにもなりました。
他の犬が大嫌いで、遠くに見えただけでも大きな声で吠えたり、18kg前後のつるちゃんを制御するのが困難なほどに興奮したりするのは全く変わりませんでした。
一か月に一度は必ず洗ってもらっているのに、その頃いた病院はなぜか、いつもプーンとイヌ臭さが漂っていて気にしていたのも覚えています。
ある日、インストラクターの先生に他犬に対するつるちゃんの興奮について相談すると「白石さんがイヌを見つけてからオスワリやツケなどの号令を出すのが遅いのよ。つるちゃんもちょっと強情だしね。
でも白石さんと仲良くやっているじゃない。それで家庭犬としては十分合格よ!」と、ニコリ。
覆いかぶさるような、私の立ち位置と向き。当時の私のつるとの付き合い方そのものを表しているようです。
なんて痩せていて、不幸せそうな顔のつるちゃんでしょう。
困っている、という以外にこの表情の読み方があるでしょうか。
当時も、もちろん私はつるちゃんを溺愛していたのですから、なお更たちが悪いです。
今は直視できないようなつるの表情ですが、当時私にはこの表情が認識できませんでした。ごめんね、ほんとにごめんね。つるちゃん。
結局現実は何も変わらず、そうこうしているうちに時間の融通の利かない事情が出来て私のしつけ教室通いは終わりを迎えました。
その後開院したマーチで、同じ先生にお願いして患者さん向けのしつけ教室を開催。みんなそれぞれ、
など、よくある悩みを持つ患者様でした。
長いかたで、年単位で続けて下さいました。
でも、それぞれの悩みは特別快方に向かっている様子がありませんでした。
ただみんな、教室でやる「ツケ」とか「マテ」」はうまくなっていく。
自分の時とあまりに同じで、だんだんと心の中に疑問を感じるようになりました。
疑問を感じるようになってしばらくした頃、我が家に海苔男が来ました。
海苔ちゃんは、小さいうちから何となくつるちゃんとは違いました。
なんにつけ興奮しやすかったと思います。
違いが大きかったことの一つに、これまでしつけ教室で得た知識や技術で海苔男の行動をコントロールしようと「オスワリ」や「マテ」「ツケ」などを教えようとするのですが、全然号令が入らないという部分がありました。
号令を出してもおやつでツっても、キョトンとするか興奮してこちらの声が耳に届いてないような様子か・・・・・・。
そこで、「このやり方は、海苔男には合っていないのかな」と考えるようになりました。
興奮しやすい海苔男を見ていると、このままでは良くないのは分かったので他の「やり方」を探しつつ、知り合いのしつけトレーナー兼ペットシッターの方に海苔男のお散歩をお願いすることにしました。
つるちゃんのように、イヌに過剰に反応するようにならないように、イヌがたくさんお散歩をしていてイヌにたくさん会える時間にお散歩をしてあげた方がいい。
イヌの一般的なお散歩時間、私たち夫婦は必ず診察業務をしているので人に任せて他のイヌに慣らそうと考えました。
同じしつけインストラクター養成講座で学んだインストラクターですし、安心してお任せできると考えていました。
※この考え方は、のちに全て間違っていたということが分かりました
その方のお散歩報告は、
「ほかのイヌにじゃれかかって大変です」
「引張りが強くて、仔犬ではないみたいです」
「リードを噛んでしまって、散歩が思うようにできません」
など、あまり良くない話の連続。
そんな中、ある日その人がこう言いました。
「やはりお散歩をスムーズに進めるのに、この引張がよくないんです。今日はね、手始めにフセを教えようとリードを短く踏んでフセを教えていたんです。」とのこと。
リードを短く踏みイヌを地面に這いつくばらせて、イヌが座ろうとしたり立ち上がろうとすると首が苦しいようにしてフセを無理やりさせるのは、いわゆるしつけ教室ではあまり珍しいやり方ではありません。
自分がしつけ教室に行っていた時につるにこれをするように言われ、つるがあまりに悲しそうな顔をして上目づかいで私を見たので、すぐに止めてしまった「フセ」でした。
「・・・・海苔男もやられたんだ」。
心の中で何かが音を立てたような気がしました。
続けてその方が
「そうしたら、海苔男くんはすごい声を出して大暴れして、キレキレになっちゃって、噛まれそうになりました。やっぱり海苔男くんにはシェパードの血が入っていますし、ヒトより上に立とうとする傾向が強いみたいですね。警察犬の訓練のような、もう少し厳しさのあるやり方に切り替えていった方がいいんだと思いますよ。」
さっき聞こえた音が今度はもっと大きな音で、警報として鳴り響いた気がします。
「これはいかん」
血の気が引くような気がしたと思います。
どうしたらいいのか分からないけど、このまま続けてはいけない事ははっきりとわかりました。
その方が帰られた後、自然に海苔男に「ごめんね」という言葉が出ました。
きっととても怖い思いをしたんだと、直感的に感じたからだと思います。
まだ小さかった海苔男。
まだ慣れないお外で、リードで地面に這いつくばらされる。
怖い声で男の人が、上から見下ろして「じっとしろ」と睨みつける。
そんな状況になった時、海苔男が暴れた。
当たり前です。
きっと怖くて何がなんだかよく分からなくなってしまって、パニックになったんだと確信できました。
そんな状況でしつけトレーナーの方がおっしゃったような、「自分の方が偉いと思ってるから反抗した」とか「踏まれたから怒っている」
とかいう感情なんて人が勝手に作り上げた妄想。
ただただきっと、海苔ちゃんは怖かったんだと思うと泣けてきました。
これは大きな間違いをしていた・・・。
この病院で開催している「しつけ教室」も、根本的に間違っている・・・。
おやつでツったって、優しげな声を出したって、スワレだのマテだの意味のないことを繰り返しさせられる「イヤナこと」は変わらずイヤだろうし、吠えや噛みつきは「「しつけ」を続けていても改善しないじゃないか・・・・。これまでずっと。
ではどうしたらいいんだろう。
正しいイヌとの付き合い方を探して、いくつもの本を読んだりセミナーに参加したりしつけ教室の見学に行ったりしました。
残念ながら「イヌとの付き合い方=厳しく毅然としたしつけ、よくできたイヌ=よく言うことを聞くイヌ」という構図は、世界中どこでも一番メジャーな考え方で、それ以外の考え方や姿勢に出会うことはなかなか難しいことでした。
この姿勢、考え方に基づいてイヌとの暮らしを見直すことで、一般に「しつけ」で矯正したいとされる、「問題行動」に対応していきます。
この姿勢の基本には、この考え方を意識しながら暮らすうちに、我が家のつるちゃんと海苔ちゃんから教わった、たくさん
の優しくて楽ちんで、そして当たり前のことが満載です。
優しくて楽ちんで、当たり前のことを続けていくと、気持ちの良い暮らしが出来るようになるなんて、素敵だと思いませんか?